筆界特定
筆界、所有権界、境界
筆界は土地の境界線のことです。これは所有権の範囲と必ずしも一致しません。例えば筆界を超えた隣地の一部を長年使用しており時効取得が成立しているようなことがあります。所有権の境のことを筆界に対して所有権界といいます。なお、境界はどちらの意味でも使用されることのある曖昧な用語です。
筆界特定制度と司法書士の業務範囲
筆界特定制度とは、その土地が登記されたときの「筆界」を法務局が明らかにする制度です。これに関する司法書士の業務範囲については司法書士法3条に記載があります。
<司法書士法3条(抜粋)>
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
4 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
8 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第百二十三条第三号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
分かりにくいので補足すると、申請人の土地の固定資産税評価額に相手方の土地の固定資産税評価額を加えて2で割り、それに0.05を掛けて得られた額が140万円以下であれば(要するに揉めている土地の価格の合計が5,600万円以下であれば)、司法書士は筆界特定手続を代理できます。それ以外の場合は法務局に出す書類を申請人の代わりに作ることだけができます。
その他の制度
土地家屋調査士会ADRでは、筆界だけでなく所有権界についても解決を図ることができます。ADRとは裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)のことで、要するに裁判によらない話し合いによる解決です。
筆界特定や土地家屋調査士会ADRで結論が出たとしても、訴訟を起こすことはできます(筆界を争うなら境界確定訴訟、所有権界を争うなら所有権確認訴訟)。ただし、筆界特定や土地家屋調査士会ADRでの結論が判決に大きく影響するものと思われます。
その他、即決和解や調停といった手段もあります。どれがベストかは相手との関係性や話のこじれ具合など状況によるので一概には言えません。なお、境界確定訴訟を起こすと和解することはできません。(所有権確認訴訟は和解できます。)