遺産分割協議における代償金についての抵当権設定

遺産分割協議では、ある財産を特定の相続人が取得する代わりに、他の相続人に金銭を支払うという内容を取り決めることがあります。例えば、主な遺産が自宅不動産のみで預貯金がほとんどない場合、同居していた相続人Aが不動産を取得する代わりに、相続人Bに対し法定相続分にあたる金銭を支払うというようなケースです。

この金銭は遺産ではなく相続人Aがポケットマネーで支払うもので、代償金といいます。実際の事例で、代償金は分割払いでもいいが支払いを担保するために不動産(相続人Aが取得する不動産)に抵当権を付けたいという方がいらっしゃいました。

それ自体はもちろん可能なのですが、その場合に抵当権が具体的にどのように登記されるのか、調べてみても先例等が見当たらず、管轄法務局に照会することにしました。1週間後に以下の通り回答がありました。

  • 登記原因は「年月日(※協議が成立した日)遺産分割協議に基づく代償金債権 同日設定」
  • 抵当権設定登記申請の登記原因証明情報は、遺産分割協議書を使用可

法務局でも前例がなく色々検討してくれたので1週間もかかったようです。具体的には、離婚に伴う慰謝料に倣い「遺産分割協議に基づく」という文言を削るかどうか議論があったようです。(ちなみに慰謝料の場合は「年月日慰謝料債権の年月日設定」となります。「離婚協議に基づく」等の文言は入りません。登記研究355号)

ただし、上記は本件の管轄法務局の回答なので、違う法務局では違う結論を出すかもしれません。実際に登記申請される際は事前に当該不動産の管轄法務局へお問い合わせください。