遺言書があっても預金解約できない金融機関がある?

相続人がA,B,Cの3人いたとして、「X銀行の預金はAに相続させる」という遺言書があった場合、通常はAのみで預金の解約手続きができます。

ところが、自筆証書遺言の場合は相続人ABC全員の実印がないと払い戻しに応じない金融機関もあります。自筆証書遺言は偽造が容易で、公正証書遺言と違って公証人による本人確認や意思確認がなされていないので本当に本人の真意によるものなのか疑わしい(既に認知症だったのにAがそそのかして書かせた等の可能性が捨て切れない)といった所が理由でしょう。

ひどい所では公正証書遺言があっても全員の実印を要求してきます。理由としては、例え真正な遺言書であったとしても後から書き換えることができるので、それが最新の遺言書であるという保証がない、といった所でしょうか。

相続人全員が仲が良ければいいのですが、遺言の内容に納得していない相続人がいる場合、協力を得るのは困難です。

民法で定められた形式に則った遺言書という書面を提示しているにもかかわらず、ああだこうだ理由を付けてヒトから預かっている金を返さないと言う以上は、その証拠を金融機関側が提示するのが筋だと思いますが、もちろん金融機関はそんな事しません。「当行の内部規定だから」の一点張りです。ではその内部規定とやらを開示しろと言ってもそれすら拒否してきます。どうしても他の相続人の協力が得られない場合は、金融機関を相手に訴訟するしかありません。

せっかく相続手続きがスムーズに行くように遺言を書いたのに、これでは無意味になってしまいます。こういった事態を避けるためには、遺言を書く前に金融機関に確認し、遺言書があっても相続人全員の実印を要求される場合は別の金融機関に預金を移すといった対策を講じる必要があります。