被相続人の登記名義が旧姓のままの場合
登記上の住所や氏名に変更が生じている場合、最新の情報に変更しなければならないのが大原則です。しかし、相続登記については、例外的に住所・氏名変更登記を省略していきなり相続による所有権移転登記をすることが可能です。ただし、住所や氏名を変更していることを証する書類(住民票や戸籍謄本等)を添付する必要はあります。
住所が最新のものと異なっていることはよくあるのですが、氏名が相違しているケースは稀です。ある相続案件で、被相続人である山田花子さんが不動産を複数所有しており、一部の不動産は旧姓(田中花子)のままとなっていました。しかもこれらの不動産は全て他の方との共有となっていました。
共有の場合、相続登記申請書に書く登記の目的は「〇〇持分全部移転」となり、登記上もそのように記載されます。この○○が山田花子なのか田中花子なのか迷いました。亡くなった時点の名前である山田花子に決まっているじゃないかと思われるかもしれませんが、前述の通り相続登記では氏名変更登記が省略されます。つまり、旧姓の田中花子名義となっている不動産については、登記記録上に突然山田花子という謎の名前が出現することになるのです。(下の名前でわかるでしょ、と言われればそれまでですが。。でも下の名前も変わる可能性はありますからね。)
管轄法務局に問い合わせたところ、旧姓となっている不動産も含め全て「山田花子持分全部移転」でよいとの回答でした。ただし、登記記録上は旧姓の不動産については「田中花子持分全部移転」になるとのことで、実際にそのように登記されました。法務局のシステム上、登記名義人と異なる名前を記載することができないそうです。