管轄の異なる不動産への抵当権設定

複数の不動産にまとめて抵当権を設定することはよく行われることです。抵当権設定登記の登録免許税は、原則として債権額の0.4%です。

管轄の異なる複数の不動産に抵当権を設定する場合、最初の登記申請で債権額の0.4%の登録免許税を納めれば、2か所目以降は不動産1件につき1,500円で登記可能です。

ただし、最初に申請した法務局で抵当権設定登記が完了していることを証明する登記事項証明書の添付が必要となります。つまり、最初の法務局での登記が完了した後でないと、2か所目以降の登記申請ができないということです。(2か所目以降も原則通り債権額の0.4%の登録免許税を納めれば可能ですが。。)

銀行としては不動産全てのトータルの担保価値に基づき融資をしているので、管轄が違うからといって一部の不動産の抵当権設定の日付が後になるというのは困るのです。そもそも管轄が分かれているのはお国の都合であって、銀行や担保提供者(お金を借りる人)の知ったことではありません。ところが全て同時に登記申請をしようとすれば登録免許税1,500円の恩恵を受けられません。正直、これは制度の不備だと思っています。

実際は、複数の法務局に同時に登記申請を出して、登記事項証明書は後から追加で提出するというやり方をすることがあります。一番早く登記が完了しそうな法務局への登記申請を最初ということにして債権額の0.4%の登録免許税を納め、他は不動産1件1,500円の登録免許税を納めます。あまり好ましいやり方ではないのでしょうが、他にやりようがないので仕方ありません。何度かやったことがありますが、今まで却下されたことはありません。

万が一登記が却下されると司法書士にとって信用問題なので、事前にこのやり方でできるかできないか法務局に問い合わせたところ、登記官にキレられたことがあります。さいたま地方法務局の志木出張所でしたが、とても態度の悪い登記官でした(たまにこういう人います)。なお、登記官の言っている内容は何一つ理解できませんでした。できるかできないのか、YESかNOかで答える質問をしたのですが、できるともできないともはっきり言わず、意味不明なことをわめきたてていました。登記官としては「できる」と言うわけにはいかないが、かといって実際にそのような申請を出されると却下するわけにもいかないので、高圧的な態度でごまかしたというのが実際の所なのかな、と思っています。

なお、根抵当権についても同様のやり方をしたことがありますが、問題なく登記完了しました。しかし、共同根抵当権は抵当権と違って登記が効力要件なので、もしかしたら抵当権よりも却下される可能性はあるのかもしれません。

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