会社分割による所有権移転登記の登記原因証明情報
会社分割により不動産の所有権を移転する場合の登記原因証明情報については通達があり、「分割契約書」及び「会社分割の記載のある承継会社の登記事項証明書」がそれにあたります。(平成18.3.29民二755号)
※新設分割の場合は「分割計画書」及び「会社分割の記載のある新設会社の登記事項証明書」になります。
この通達により、「契約書(計画書)を提出しなければならず、報告形式の登記原因証明情報は不可」という考えがあるようです。報告形式(差し入れ式ともいいます)の登記原因証明情報とは、登記のためだけに別途作成する書面で、契約書の中から登記に必要な情報を抜粋したものです。通常の売買では売買契約書そのものを提出することはほとんどなく、報告形式の登記原因証明情報を作成して提出します。
登記には単独申請と共同申請があります。前者は相続登記や住所変更登記などで、登記原因証明情報として戸籍や住民票といった公的な書類が必要になります。一方、後者は「登記権利者」と「登記義務者」が共同で申請する形で、例えば売買であれば買主が「登記権利者」、売主が「登記義務者」となります。共同申請の場合は公的な書類や契約書そのものでなくとも、報告形式の書類を作成して登記義務者が署名または記名押印することで登記原因証明情報とすることができます。登記を手放す者がハンコを押した書類があるならそれで十分、という考え方です。
会社分割は共同申請です。分割会社が登記義務者、承継会社(新設分割の場合は新設会社)が登記権利者になります。筋から行くと報告形式の登記原因証明情報で登記申請できるはずなので、管轄法務局に問い合わせたことがあります。その時の回答は「報告形式でOK」でした。
※法務局によって考えが異なる可能性がありますのでご留意願います。
蛇足ですが、その案件では分割会社を債務者とする根抵当権が登記されていました。これについては分割契約書で承継会社が債務を引き受けることになっていたとしても、一旦分割会社と承継会社の両方を債務者とする変更登記を入れた上で、免責的債務引受による債務者(および債権の範囲)の変更登記を別途入れる必要があります。(平成13.3.30民三867号)