不動産決済トラブル2-自己資金の送金忘れ
不動産を購入する際は通常銀行から融資を受けますが、一部を自己資金で支払うことも多いと思います。有名な大手広告代理店の社員の買主で、多忙のため決済当日は欠席、自己資金分は事前に融資銀行の口座に移しておく段取りとなっていました。
案の定、その買主は資金の移動を失念していました(前日に仲介業者が念押しで確認したにも関わらず、です。)。一般的な売買契約書では、代金全額の支払いを条件として所有権が移転することになっています。銀行からの融資額だけでは足りないので、このままでは所有権は移転しません。当然、所有権移転の登記も申請できません。仲介が至急買主と連絡を取り、今すぐ来て自己資金の振込手続きをするよう伝えましたが「忙しいのでムリ」との回答。
売主が「不足分は後日でいいよ」と言えばそれで済む話かというと、そう簡単ではありません。売買対象の不動産には売主がその不動産を買った時に受けた融資の抵当権が付いており、売主は売買代金をもって借入残金の返済に充てる流れとなっていたのです。ところが売買代金が足りず借入残金を全額返済できないので、抵当権を消すことができません。今回、買主に融資する銀行は、1番順位で抵当権が設定されることを条件に融資を実行します。先順位の抵当権が消えずに残っていることは大問題なのです。
私も会社員を長くやっていたので「忙しい自分に酔っている人」を何人も見てきましたが、大抵仕事できない人ですね。事実、この買主も自分の不動産の購入というタスクを失敗していますし。「忙しいんだから失敗しても仕方ない」というのは関係者達にとって迷惑な話です。みんな暇だから決済の場に集まったわけではないのですから。まあ、過労死が問題になった会社なので、本当に死ぬほど忙しかったのかもしれませんが。。