抵当権の追加設定

抵当権の追加設定とは、ある債務を担保するために不動産に抵当権が設定されているときに、同じ債務を担保するために別の不動産にも抵当権を設定することです。土地を担保に銀行からお金を借りている会社(あるいは社長個人)が、後から新しい不動産を購入した場合などに行われます。

抵当権の追加設定の場合、既存の抵当権登記を最新の情報に更新する必要はありません。例えば債権額や金利が変更になっていてもその変更登記をすることなく、新しい不動産にだけ変更後の内容で抵当権を設定することができます。(ちなみに、根抵当権の場合はダメです。既存の登記も最新の情報に更新する必要があります。)

抵当権者(つまりお金を貸している銀行)の本店所在地が変わっているが、費用節約のため省略できる登記は省略して欲しいと銀行から要望されたことがありました。前述の通り、抵当権の追加設定をするだけなら抵当権者の本店移転登記は省略可能です。

ところが、債務者(つまりお金を借りている人)の住所も変わっていました。これも省略可能なのですが、銀行に確認したところ、最新の情報に更新して欲しいとのことでした。銀行の本店移転は銀行の都合で行ったことなのでもし変更登記をするならば費用は銀行負担ですが、債務者の住所変更は債務者の都合で行ったことなので費用を債務者に負担させることができるのです。

債務者の住所変更登記は抵当権者が登記権利者、抵当権設定者(不動産の所有者)が登記義務者となって共同申請を行います。何らかの新しい登記をする際、申請人の登記記録(住所や名前など)に変更が生じている場合は、前提として最新の情報に変更する登記が必要となります。抵当権の追加設定登記はあくまで例外なのです。

結局、抵当権者の本店移転登記は、抵当権追加設定登記の前提としては省略可能だが、債務者の住所変更登記の前提としては必要ということになります。これを見落として銀行に費用負担が発生しない前提で話を進めてしまうとトラブルになるので要注意です。

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