相続放棄と取り分ゼロとする遺産分割協議は違う

相続人の間で話し合った結果、財産を一切受け取らないことを相続放棄と言う人がいますが、違います。

相続放棄とは相続人としての地位を放棄することです。家庭裁判所に申し立てる必要があります。相続人ではなくなるので、そもそも遺産分割協議に参加することができません。

夫が亡くなって妻と子が相続人となるケースで、妻に全財産を相続させる意図で子が相続放棄をしてしまうと面倒なことになります。子が相続放棄した結果、第2順位の人に繰り上げで相続権が発生してしまうからです。

第2順位の人とは夫の両親です。両親とも既に亡くなっている場合は夫の兄弟姉妹です。兄弟姉妹も既に亡くなっている場合はその子(夫から見て甥・姪)です。なお、甥・姪が既に亡くなっている場合はその甥・姪の子は相続人にはなりません。

両親は先に亡くなっているケースが多いので、この場合、妻と夫の兄弟姉妹とで遺産分割協議をする必要が生じます。疎遠になっていたりそもそも会ったこともないということも多いでしょう。うっかり相続放棄してしまったことが原因ですが、原則として一度相続放棄をすると取り消すことはできません。

なお、相続登記においては財産を取得する・しないに関わらず相続人全員の戸籍謄本を添付する必要がありますが、相続放棄した者については必要ありません。代わりに相続放棄申述受理証明書もしくは相続放棄申述受理通知書を添付します。相続放棄申述受理通知書は相続放棄をすることにより家庭裁判所から送られて来ますが、相続放棄申述受理証明書は家庭裁判所に対し別途取得手続きが必要です。

従来は相続放棄申述受理証明書でなければ相続登記できませんでしたが、取り扱いが変更され相続放棄申述受理通知書でも可となりました。