抵当権抹消の委任状の会社代表者が代わっている場合
住宅ローンを完済すると抵当権抹消登記用の書類一式が送られてきます。この中には抵当権者(通常は保証会社)の委任状が含まれています。委任状に記載されている委任者は、その時点での保証会社の代表取締役です。
すぐに抵当権抹消登記をせずにしばらく放置していると、保証会社の代表取締役が代わってしまうことがあります。ですがこの場合でも不動産登記法17条には代理権不消滅という規定があり、委任状はそのまま使えます。
<不動産登記法17条(代理権の不消滅)>
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
一 本人の死亡
二 本人である法人の合併による消滅
三 本人である受託者の信託に関する任務の終了
四 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更
ただし、委任状が発行された時点において委任状に記載されている人が代表取締役であったことを証明する書類の添付が必要となります。具体的には保証会社の履歴事項全部証明書を法務局で取得すればそれに記載されています。しかし、履歴事項全部といいつつ役員については過去3年分しか記載されないので、それより前に退任している場合は閉鎖事項証明書を取得する必要があります。
なお、平成27年11月2日より、会社法人等番号(会社1つ1つに振られる数字12桁の識別番号)を登記申請書に記載すれば、会社の代表取締役の資格を証する書面(履歴事項全部証明書など)の添付は不要となりました。
既に3年を経過していて履歴事項全部証明書に当時の代表取締役の記載がなく閉鎖事項証明書に記載されている場合、会社法人等番号を記載することにより閉鎖事項証明書の添付は不要となるのでしょうか?法務省のWebサイト(不動産登記令等の改正に伴う添付情報の変更に関するQ&A)には以下のような記述があります。
Q18-1
住所の変更事項等が閉鎖登記記録に記録されている場合であっても,会社法人等番号を提供すれば,法人の住所変更等を証する情報の提供を省略することができますか。
A18-1
以下の閉鎖事項証明書の提供を省略することができます。(以下略)
役員変更ではなく住所変更についてのQ&Aですが、趣旨を鑑みると役員変更についても同様と考えられます。1点注意すべきは、「現在の会社法人等番号と閉鎖事項証明書記載の会社法人等番号が同じであること」が条件だということです。かつては本店移転により会社法人等番号が変更されることがありました(現在は変更になることはありません)。
試しに閉鎖事項証明書を添付せずに抵当権抹消登記申請を実際に出したことがありますが、その時は問題なく登記完了しました。(もしかしたら管轄法務局によって扱いが違うかもしれません。)