株式の質入れを定款で禁止できるか
株主は、自分が持っている株を質に入れることができます。会社法にも以下のような規定があります。
<会社法148条>
株式に質権を設定した者は、株式会社に対し、次に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
一 質権者の氏名又は名称及び住所
二 質権の目的である株式
一方で、会社法には会社のルールは基本的に定款で自由に定めることができるという定款自治の概念があります。もちろん法律を無視して何でもかんでも自由に決めていいということではありませんが、平成18年の新会社法施行に伴い、幅広い定款自治が認められるようになりました。
では、この株式の質入れを定款で禁止することは可能でしょうか。
これについて会社法にはっきりした規定はありませんが、株主の投下資本回収の機会を不当に制限するものであり認められないとの考えがあります(江頭憲治郎「株式会社法」)。株主が株を買うために使ったお金を、その株を使って(質入れして)回収することは株主の自由であり、会社側が口を出してはいけない、という考え方です。
ところで、株式には譲渡制限をかけることができます。
<会社法108条1項>※一部抜粋
株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。
4 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
株式の質入れを禁止したい目的が、自社の株式が予期せぬ人物の手に渡ることを防ぎたいということならば、この譲渡制限規定を使えばよいということになります。
なお、会社が株式の譲渡(つまり売却)を承認しない場合、株主は会社に株式の買取を請求できるので、株主の投下資本回収の機会が制限されるということにはなりません。