未支給年金は相続財産ではない?
年金は偶数月の15日にその前月と前々月の2か月分が支払われます。例えば6・7月分の年金は8月15日に支払われます。年金を受け取っていた人が死亡した場合、「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出しなければなりません。これを提出せずに死亡後も年金を受け取り続けることは違法ですし、もし手続きが遅れて年金が振り込まれてしまった場合は返還しなければなりません。
年金は死亡した月の分までもらうことができます。日割計算はしません。例えば8月10日に死亡したならば、8月分まではもらえます。ところが年金受給権者死亡届を提出すると振込はストップするので6・7・8月の3か月分が未支給の状態となります。未支給年金は本来死亡した方が受け取るはずだったものなので遺産(相続財産)に含まれるように思えますが、実は含まれません。遺産ではないので遺産分割協議の対象にもなりません。国民年金法に以下のような規定があります。
<国民年金法 第19条第1項>
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
上記の「自己の名で」というのがポイントです。相続人の立場として被相続人の権利を主張するのではなく、自分自身の権利として請求できるということです。
なお、「生計を同じくしていたもの」という条件がありますが、日本年金機構に聞いてみたところ、実際はかなり広く認めてくれるようです。必ずしも同居している必要はなく、施設に度々面会に行っていた程度でも認められるとのことでした。
先の8月10日に亡くなった例で、8月15日に6・7月分の年金が振り込まれてしまった場合、未支給年金請求の届出をしない限り返還しなければなりません。生きていた期間の分なのに返還するのはおかしい気もしますが、8月10日時点で受け取っていなかった未支給年金は国民年金法に定められた請求権者のものであり、被相続人のものではないので返還する必要があるのです。