司法書士は誰が決めるのか

マイホームを購入したことのある人は経験あるかもしれませんが、決済当日に銀行に行くと司法書士がいます。その場で「初めまして」と名刺を渡されることがほとんどだと思いますが、今回の取引でこの司法書士に依頼すると誰が決めたのでしょうか。

本来は、司法書士にお金を払う人(買主)が自由に選ぶことができるのが筋です。ところが、ほとんどの人は司法書士の知り合いはいないでしょう(というか司法書士が何をする人かも知らないと思います)。

一番多いのが、売主が不動産業者で、その業者と提携している司法書士となるケースです。売買契約書をよく読むと「司法書士は売主が指定する」との一文があるかと思います。

個人間の中古物件の売買等では、仲介業者や融資をする銀行の知り合いの司法書士になります。ネット銀行では提携の司法書士を使うことを融資の条件としている所が多いので、前述の不動産業者が売主の場合では、所有権移転登記は業者指定の司法書士、抵当権設定登記は銀行指定の司法書士となります。

売買の前提として既存の抵当権を抹消することは売主の責任なので、抵当権抹消登記の費用は売主が負担します。不動産業者が売主で、買主には知り合いの司法書士がいて、ネット銀行から融資を受ける場合、抵当権抹消登記は業者指定の司法書士、所有権移転登記は買主の知り合いの司法書士、抵当権設定登記は銀行指定の司法書士と、決済の場に3人の司法書士が現れることになります。買主からするとわけのわからない混沌とした状況ですが、司法書士業界も少ないパイの取り合いなのです。

なお、売買契約書に「司法書士は売主指定」とあっても、交渉すれば買主が自由に選べることが多いと思います。売主の不動産業者にとって買主はお客様ですし、本来は司法書士にお金を払う人が選ぶものですから。しかし、銀行指定の司法書士は変更できないことがほとんどです。その司法書士を使うことが融資の条件だからです。そもそも抵当権は銀行側の権利なので、抵当権設定登記の費用は銀行が負担するのが筋ですが、これを融資を受ける側(買主)が負担することも融資の条件としています。お金を借りる側は立場が弱いのですね。