不動産決済トラブル3-複数の抵当権の抹消

売買対象の不動産に抵当権が付いていることがあります。売主がその不動産を買った時に融資を受けているからです。売買契約書には、抵当権は抹消してから所有権移転するという条件が付いていることが一般的です。複数の借入先があり、抵当権も複数付いているときは、全て抹消することが条件となります。

抵当権が残っているということは、借入金をまだ全額返済していないということです。売主は、今回の売買で受け取る売買代金の一部を残金の返済に充てるつもりでいます。抵当権が複数付いている時は、売買代金の振り分けに注意する必要があります。例えば、抵当権が3つ付いていて、残金がA銀行500万円、B銀行300万円、C銀行200万円であるならば、売買代金(2000万円とします)をそれぞれの銀行の返済用口座に振り込まなければなりません。この時、各銀行に残金以上の額が振り込まれるように手配しなければなりません。そうしなければ完済とはならず、抵当権を抹消するための書類を渡してくれないからです。

一般的には、どこか1つの銀行(例えばA銀行)に売買代金全額を振り込み、その後A銀行の窓口に移動してB銀行、C銀行へ振り込む(仕分ける)手続きを行います。決済は買主が融資を受ける銀行(X銀行とします)で行われることがほとんどなので、そこから一番近い銀行を一旦の振込先にする場合が多いと思います。X銀行から直接A,B,C銀行に振り分けてもいいのですが、振込手数料を買主が3倍払うのは不当なので、その点は考慮する必要があります(売主が現金で清算する等)。また、銀行によっては債務者(つまり売主)名義での振込でなければならないという所もあり、この場合は一旦どこかの売主名義の口座を経由する必要があります。X銀行から直接だと買主名義での振込になってしまうからです。

決済当日のお金の流れのアレンジは仲介業者の仕事です。司法書士は各借入先にいくら残金があるのか知りませんし、仮に銀行に聞いたとしても個人情報なので教えてくれません。たまに経験不足の仲介さんがこの辺をよく分かっていなくてバタバタしてしまうことがあります。抵当権抹消の書類は決済が終わった後に司法書士が各銀行に取りに行くことが多いのですが、振り込んだ金額が1円でも不足していると書類を渡してくれません。買主は抵当権を抹消することを条件に購入していますし、融資銀行(X銀行)も1番順位で抵当権が付くことを条件に融資しています。既存の抵当権が消せないというのは大ゴトなのです。