選任懈怠と登記懈怠どちらの過料が重いか

不動産登記と違って商業登記は義務です。登記事項に変更が生じたら2週間以内に登記申請する必要があります。2週間を過ぎると100万円以下の過料が課せられる可能性があります。実際は少し過ぎたくらいでは課されることはなく、1年くらいは大丈夫な所が多いみたいですが、法務局によっても違うようです。

ところが実際には何年も登記せずに放置していることがままあります。特に役員変更の手続きをきちんとしていないケースが散見されます。10数年も役員変更登記をせずに放置していた案件が持ち込まれたことがあります。

役員変更の手続き(株主総会での決議)自体をしていないことを選任懈怠、手続きはきちんと行っているが登記だけしていないことを登記懈怠といいます。過料は会社の代表者個人に課されるので司法書士が関知する所ではないのですが、聞いた話だと選任懈怠のほうが過料が重いことが多いようです。

ですので、この案件では選任手続きはちゃんとしていたが登記だけを怠っていたということにしました。平成18年の会社法施行以降、株式を公開していない会社の役員の任期は最長で10年まで伸ばすことができるようになりました(それ以前は2年でした。)。そこで、会社法施行と同時に役員の任期を10年に伸長したとする株主総会議事録と、10年経った平成28年の定時株主総会で全役員を重任(※同じ人が引き続き就任すること)したとする株主総会議事録を作成しました。

このやり方はもちろん厳密にいうとダメです。実際は選任手続きを怠っていたわけですから。

ですが、現状の会社法の規程は現実にそぐわないと思います。家族だけでやっている小さな会社は毎年きちんと株主総会を開催したりはしないでしょう。決算報告を官報に毎年きちんと掲載している会社が一体どれだけあるでしょうか。道路の制限速度と同じで、厳しすぎるルールは誰も守らないのです。

商業登記ではこのような小手先の辻褄合わせをすることがたまにあります。基本的にルールは守らなければなりませんが、あまり馬鹿正直なのも考えもので、事案に応じて柔軟に対応すべきだと考えています。