借地上の相続未登記建物

田舎に既に亡くなっている祖父名義の建物があるとのことで相談に来た方がいらっしゃいました。土地は借地で、現状はもう誰も住んでいないので、建物を取り壊して借地契約を解除したいとのことでした。

建物の名義人である祖父の相続人は相談者の他にも多数いらっしゃるため、本来は相続人全員で合意した上で話を進める必要があります。ですが実際はその建物に関心がなかったりそもそも知らない相続人もいるので難しいところです。

建物はもうボロボロなので価値はほとんどないでしょう。しかし気を付けるべきは「借地権には財産的価値がある」ということです。地域にもよりますが、底地価格の60~70%くらいの価値があるのが通常です。逆に言うと、借地権付きの土地の価値は更地価格の30~40%しかないということです。

借地権は売却することができます(実際のところ買い手が付くかどうかはさておき)。借主から地主に対する借地権買取請求権はありませんが、立退料という名目で地主に金銭を支払うよう交渉することは可能です。地主からすれば自分の土地を返してもらうのに金を払わなければならないというのは納得いかないでしょうから、実際に要求するとモメることも多いでしょう。しかし、この要求をせずに勝手に借地契約を解除してしまうと、他の相続人から「財産的価値のある権利を勝手に放棄した」とクレームを付けられる可能性がないとは言えません。

結局のところケースバイケースです。相続人全員の合意を得るのが難しくても、文句を言ってくる可能性がないのであれば、一部の相続人の判断で話を進めてもよい場合もあると思います。