建物の合体登記

以前、1度だけ建物合体の登記を見たことがあります。合体合併とは違います。合併は母屋と物置を1個の建物とするような登記です。合併するかしないかは自由です。対して合体は物理的にくっついて1つの建物になってしまった場合です。自由はありません。問答無用で1個の建物として登記しなければなりません。

以下、合体した建物についての備忘録です。

所有権登記に受付年月日・受付番号の記載がない

合体は権利の登記ではなく表題の登記です。表題登記申請をすることにより、所有権の登記は登記官の職権でなされるので、受付年月日・受付番号は登記事項に記載されません。(ちなみに、土地の合筆では受付年月日・受付番号は記載されます。統一感がない気がしますが。。)

では、権利証の登記済印にも受付年月日・受付番号がないのかと思えば、表題登記申請時の日付と受付番号が記載されていました。この日付と番号は登記事項のどこにも記載されていません。もし決済の場で初めて見たらテンパること間違いなしです。しかし、もちろんこの権利証で所有権移転登記は可能です。なお、合体前の2つの権利証でも可能です。

合体前の建物にそれぞれ別の抵当権が付いている場合

合体前の建物はいずれも山田太郎さんが単独で所有していましたが、それぞれ別の抵当権が付いていました。この場合、各抵当権の効力は合体後の建物全体に当然に及ぶものではありません。合体後の建物のどれだけに及ぶのか明確にするため、所有権(甲区)の登記は持分3分の2山田太郎[あ]と持分3分の1山田太郎[い]の共有となっており、抵当権(乙区)の登記は山田太郎[あ]持分と山田太郎[い]持分にそれぞれ設定されたことになっていました。

ちなみに、別個の抵当権が付いている建物は合併はできません。ですが合体は物理的に1つになってしまったということなので、別個の抵当権が付いていようが登記せざるを得ないのですね。

所有権一部移転の申請書の書き方

本件では所有権の2分の1だけを息子さんに贈与したいとのことでした。実態は同一人物である山田太郎さんの単独所有なので、登記の目的の書き方について「所有権一部移転」でよいか管轄法務局に問い合わせてみたところ、「山田太郎[あ]持分6分の2、山田太郎[い]持分6分の1移転」にせよとの回答でした。実態に関わらず、登記記録上はあくまで共有として扱うということのようです。